遺品を放置しておくとこんな問題が
遺品を放置しておくとこんな問題が
前回は遺品整理がすすまない理由についてお話ししましたが、今回は遺品整理を先延ばしにすると招いてしまう、思わぬ損失についてのお話です。
気付かないまま失ってしまう財産
遺品整理を始めると、思わぬ場所から故人の通帳や国債などの証券が出てくることがあります。また、誰にも知らせずに加入していた生命保険の証書なども見つかることがあります。これらには期限が設けられている場合があり、注意が必要です。
例えば郵政民営化前(平成19年9月30日まで)に預けた郵便貯金については、満期後20年2か月を過ぎると払い戻しの権利が消滅し、現金は受け取れなくなります。
平成14年までに発行された国債についても、元本と利子の支払いについて消滅時効か成立する場合があります。具体的には、元本については償還日から10年、利子については利払日から5年が経過すると、国に対して国債の元利金を請求する消滅時効が完成し、消滅時効が完成した国債については元利金の支払いが行われません。(ただし、平成15年1月以降に発行されたすべての国債については、振替口座簿を管理する金融機関を通じて、確実に支払われます)
生命保険にも、保険金請求権の消滅時効期間があります。権利発生時の翌日から3年間というのが一般的です。生命保険会社によって、死亡保険金や満期保険金などは時効が過ぎても受け取れる場合があるようですが、注意しておく方が無難です。
これらの財産は、気付かなければそのまま失ってしまうかもしれないものです。自分のために遺してくれた親の思いを受け取るためにも、遺品整理は早めに行うことが大切です。
気付かないまま増えてしまう負債
遺品整理で出てくるものは財産だけではありません。思わぬ負債が見つかるケースは決して少なくありません。
例えば、今から50年ほど前、全く資産価値のない土地を売りつける原野商法が社会問題化しました。また30年ほど前には、投機的な目的でのリゾートマンション購入が人気になりました。その後、バブルが崩壊し、リゾートマンションの価格は暴落、物件とローンだけが手元に残った、という例が多くあります。これらの資産は、売ることが難しいだけでなく、固定資産税や管理費など、持っているだけで費用が発生します。そして、これらの費用の支払いを口座振替にしていると、亡くなった後も、残高がある限り引き落としは続きます。あまり知られていないことかもしれませんが、人が亡くなると自動的に銀行口座が凍結されるわけではありません。あくまでも、遺族から銀行に対して、亡くなった旨を通知することによって、口座の凍結が設定されます。したがって、そのまま放置しておくと、引き落としは続いていくことになるのです。
他に、故人がインターネットなどで株式やFXなどの取引をしていた場合、遺品整理を先延ばしにしている間に、どんどん値下がりしてしまい、亡くなった時には資産だったものが、気付いた時には負債になってしまっていた、というケースもあります。
相続放棄の手続きは、亡くなったことを知った日から3か月以内と法律で定められています。期限を過ぎても理由によっては認められる場合もあるようですが、確実ではありません。
空家の放置による危険
親が亡くなった後、その家に誰も住まないのであれば、家の処分についても早々に考えなくてはいけません。空家のまま放置しておくことでかかる費用は、固定資産税だけでは済まないこともあるからです。
例えば、劣化や事故、自然災害などで家が損壊し、その一部が人や他人の物を傷つけるなど被害を及ぼした場合、損害賠償を請求される場合があります。
また、誰も住んでいない空家が火元となる火事も、少なくありません。その原因の多くは放火ですが、庭木や山積したゴミから出火したり、ネズミが配線をかじって起こす火事もあるといいます。そのような火事で他人に被害が及んでしまった場合、空家の管理状況などによっては、持ち主に賠償責任が発生する可能性があります。
家の資産価値の低下
人が住まなくなった家は驚くスピードで劣化が進みます。空気が通らなくなることによりカビや害虫の発生、人の気配がなくなるとネコやネズミが出入りすることで糞尿などの悪臭が染みつく、雨漏りや腐食の発見の遅れなどにより人が住めない状態になってしまうことも。物が残ったままですとさらにこれらの劣化を加速させることになります。そしていざ売却したい、人に貸したいとなったときに思ったほどの価格にならなかったということになりかねません。
遺品整理は、故人とのお別れのつらさと膨大な手間によって先延ばしにされてしまいがちですが、そのために思わぬ損失やさらなる手間を招いてしまう恐れがあることがお分かりいただけたでしょうか。 とはいえ誰もがおそらく初めての経験となる遺品整理について、どういう手順で進めていくべきか、次回はその手順についてお話しします。